はじめに
前回の記事 では、「好きなことを仕事にしたい」と思ったときに、最初に自分に問いかけてほしい三つのことをお話ししました。
今回は、そこから一歩進んで、少しだけ耳の痛いお話をします。それは、「作ることが好き」という気持ちだけでは、仕事にはならないということです。
誤解のないように先にお伝えすると、これは「好き」を否定する話ではありません。むしろ、その「好き」を長く守り続けるために、知っておいてほしいことです。
趣味と仕事を分けるもの
趣味として作るとき、作品の行き先は自分です。作りたいものを、作りたいときに、作りたいだけ作る。それで十分に満たされますし、それこそが趣味の豊かさです。
仕事として作るとき、作品の行き先は「誰か」になります。その誰かが作品を見つけ、欲しいと思い、お金を払って手に取ってくれて、はじめて仕事が成り立ちます。
つまり、趣味と仕事を分けるのは、技術の高さではありません。作品の向こうに、受け取る人がいるかどうかです。どれだけ丁寧に作っても、届ける相手が見えていなければ、それはまだ「上手な趣味」のままなのです。
作ることが好きな人がつまずきやすいところ
作ることが好きな人ほど、気づかないうちに陥りやすいパターンがあります。
- 作りたいものを作り続けて、作品だけが増えていく 手元に作品はたくさんあるのに、どこで誰に届けるかが決まっていない。
- 価格を材料費の感覚で決めてしまう 「これくらいなら買ってもらえそう」と安くつけ、制作時間が報われない。
- 発信や販売を「苦手だから」と後回しにする 作る時間を優先するうちに、作品を知ってもらう機会がなくなっていく。
- がんばっているのに、続けるほど疲れてしまう 売上と手間のバランスが見えないまま、好きだったはずの制作が負担になる。
どれも、作ることに真剣な人だからこそ起こることです。そして、どれも「作る力」ではなく、作る以外の力が足りていないことから生まれています。
「作る」の前と後にある仕事
作家の仕事を一本の流れとして見ると、「作る」はその真ん中にあります。そして、その前と後にも大切な仕事が続いています。
作る前の仕事
- 誰に届けたいのかを考える
- どんな作品なら、その人に喜んでもらえるかを決める
- 素材を選び、仕入れ、価格の目安を立てる
作った後の仕事
- 作品の魅力を、写真と言葉で伝える
- 届けたい人がいる場所で販売する
- 買ってくださった方との関係を育て、次につなげる
作ることが好きな人は、真ん中の「作る」だけに力を注ぎがちです。けれど、前と後の仕事がそろって、はじめて作品は誰かの手に届きます。この連載の第1章以降では、この流れの一つひとつを順番に取り上げていきます。
「作ることが好き」は、いちばんの強み
ここまで読んで、「やっぱり自分には向いていないのかも」と感じた方もいるかもしれません。でも、どうか安心してください。
発信も、価格の決め方も、販売の工夫も、あとから学んで身につけることができます。一方で、「作ることが好き」という気持ちは、教わって身につくものではありません。何度失敗しても手を動かし続けられる、その気持ちこそが、作家としてのいちばんの強みです。
大切なのは、「好き」だけで勝負しようとしないこと。「好き」を真ん中に置いたまま、その周りに必要な力を少しずつ足していく。そう考えると、作家の仕事はぐっと現実的なものになります。
おわりに
作ることが好き、だけでは仕事にならない。けれど、作ることが好きでなければ、作家の仕事は続きません。
「好き」は出発点であり、支えでもあります。その気持ちを大切にしながら、作品を誰かに届けるための力を、これから一緒に育てていきましょう。
次回は「上手に作れることと、選ばれることは違う」についてお話しします。