はじめに
前回 は、「上手に作れること」と「選ばれること」は違う、というお話をしました。お客様は技術の高さではなく、別の物差しで作品を選んでいる、ということでした。
では、選ばれる作家になるためには、どんな力が必要なのでしょうか。今回は、作家に求められる力を「作品づくりの力」と「作家活動の力」の二つに分けて考えてみます。
この二つを分けて考えるだけで、「なぜうまくいかないのか」「何から手をつければいいのか」が、ずいぶん見えやすくなります。
作家には二つの力がある
作品づくりの力は、作品そのものを生み出す力です。技術、デザイン、素材や色を選ぶ感覚、丁寧に仕上げる集中力。作り手の多くが「好き」と感じ、自然と磨いてきた力でもあります。
作家活動の力は、その作品を誰かに届け、仕事として続けていく力です。作品をどう見せるか、いくらで販売するか、どこで出会ってもらうか、どうやって続けていくか。
| 作品づくりの力 | 作家活動の力 | |
|---|---|---|
| 向き合う相手 | 素材・作品 | お客様・市場・自分の時間 |
| 問いかけ | どう作るか | 誰に、どう届けるか |
| 身につく場面 | 制作・練習 | 発信・販売・振り返り |
この二つは、どちらも作家に欠かせない力です。けれど、まったく種類の違う力でもあります。作品づくりがどれだけ得意でも、作家活動の力が自然に身につくわけではありません。
作家活動の力に含まれるもの
作家活動の力と一言でいっても、その中身はさまざまです。たとえば、次のような力が含まれます。
- 考える力:誰に、どんな作品を届けるのかを決める
- 数字を見る力:材料費や制作時間から価格を決め、利益を確かめる
- 伝える力:写真や言葉で、作品の魅力を伝える
- 届ける力:販売の場を選び、お客様と出会う
- 関係をつくる力:一度買ってくださった方と、つながり続ける
- 続ける力:時間や体力を管理し、無理なく活動を続ける
こうして並べると、作家の仕事は、ひとつの小さなお店や会社を営むことに近いとわかります。作品をつくる職人であると同時に、その作品を扱うお店の店主でもある。それが作家という仕事です。
「苦手」は、才能の問題ではない
作り手からよく聞くのが、「作るのは好きだけど、発信や販売は苦手で」という言葉です。
けれど、その「苦手」の多くは、才能の問題ではありません。作品づくりは何年もかけて練習してきたのに対して、作家活動の力はまだ学ぶ機会がなかっただけ、ということがほとんどです。
思い出してみてください。最初から上手に作れた人は、ほとんどいないはずです。基本を学び、手を動かし、失敗しながら少しずつ上達してきました。作家活動の力も同じです。考え方を知り、実際にやってみて、振り返る。その繰り返しで、ちゃんと身についていきます。
二つの力のバランスを考える
作品づくりの力と作家活動の力は、自転車の前輪と後輪のようなものです。どちらか一方だけが大きくても、前には進みにくくなります。
いま、あなたはどちらに時間を使っているでしょうか。制作の時間は十分にとれているのに、発信や販売の準備はいつも後回しになっていないでしょうか。あるいは反対に、発信に追われて、作品づくりの時間が削られていないでしょうか。
すべてを完璧にこなす必要はありません。得意なことは伸ばし、苦手なことは最低限の形を整える。手に余ることは、人の手や仕組みを借りる。大切なのは、二つの力の両方に目を向けて、自分に合ったバランスを見つけていくことです。
おわりに
作品づくりと作家活動は、別の力です。だからこそ、作品づくりが得意な人が作家活動でつまずくのは、とても自然なことです。
足りない力に気づけたら、それは伸ばせる力に変わります。作品づくりの力を大切にしながら、作家活動の力も少しずつ育てていきましょう。
次回は、序章のまとめとして「技術・世界観・発信・販売をひとつにつなげる」についてお話しします。