ハンドメイド作家もビジネスの視点を|作家活動を「小さなお店」として考える

ハンドメイド作家もビジネスの視点を|作家活動を「小さなお店」として考える

はじめに

前回:序章05「技術・世界観・発信・販売をつなげる」は、技術・世界観・発信・販売の四つをひとつにつなげて考える、というお話をしました。序章では、「好き」を仕事にするときに向き合うことを、全体像として見てきました。

ここからは第1章「作家としての土台をつくる」に入ります。四つの要素を一つずつ掘り下げる前に、まずはそのすべてを支える土台を整えていきます。

第1章の最初のテーマは、「作家活動をビジネスとして考える」です。

「ビジネス」という言葉への抵抗感

「ビジネス」と聞くと、少し身構えてしまう作り手は少なくありません。

  • お金のことばかり考えるのは、作品に対して不誠実な気がする
  • 売るために作るようになったら、作品がつまらなくなりそう
  • 自分はそんなに大きなことをしたいわけではない

その気持ちは、作品を大切に思っているからこそ生まれるものです。けれど、ここで言う「ビジネス」は、大きな会社を作ることでも、利益だけを追いかけることでもありません。

自分の作品を必要としてくれる人に届け、その対価を受け取り、また次の作品をつくる。その循環を、無理なく続けられる形に整えること。作家にとってのビジネスとは、そういうものだと私は考えています。

作家活動を「小さなお店」として見てみる

序章で、作家の仕事はひとつの小さなお店を営むことに近い、とお話ししました。ここでは、その「お店」をもう少し具体的に見てみましょう。

お店の仕事 作家活動でいうと
仕入れ 素材を選び、買い揃える
商品づくり 作品を制作する
値札をつける 価格を決める
看板・チラシ SNSやホームページで発信する
店頭・接客 オンラインショップやイベントで販売する
帳簿をつける 売上や経費を記録する

普段は意識していなくても、作家はすでにこのすべてを、一人で引き受けています。私自身も、マクラメ糸はブラジルの繊維メーカーから、天然石はインドから、自分で仕入れています。仕入れの段階から、もうお店の仕事は始まっているのです。

「ビジネスとして考える」とは、すでにしているこの仕事を、一つのお店の営みとして見直すことだと言えます。

ビジネスとして考えると見えてくること

お店の店主になったつもりで、自分の活動を見てみてください。これまでは気にしていなかった問いが、自然と浮かんでくるはずです。

  • この作品は、ひとつ売れるといくら手元に残るのか
  • どの作品がよく売れていて、どれが売れていないのか
  • 一つの作品に、実際にはどれくらいの時間をかけているのか
  • どの販売の場が、自分に合っているのか
  • このままのやり方で、一年後も続けられるのか

どれも、「もっと売りたい」ための問いではありません。「このまま続けていいのか」を確かめるための問いです。

こうした問いに答えられないままだと、がんばっているのに手元にはほとんど何も残らない、という状態に気づかないこともあります。時間や利益の具体的な見方は、この章の後半で一つずつ取り上げていきます。

続けるために、ビジネスの視点を持つ

ビジネスとして考えることは、作品づくりの自由を奪うものではありません。むしろ、その自由を守るためのものです。

手元にきちんと利益が残れば、良い素材を仕入れたり、新しい技法を学んだり、じっくり作品づくりに向き合う時間をつくったりできます。反対に、利益が残らないままでは、どれだけ好きでも、いつか続けられなくなってしまいます。

大切なのは、作り手としての目と、店主としての目を、両方持つことです。作っているときは作り手として作品に没頭する。そして時々、店主として一歩引いて、自分のお店全体を見渡す。その切り替えができるようになると、「好き」を長く続けていける土台ができていきます。

おわりに

作家活動をビジネスとして考えることは、「好き」を手放すことではありません。その「好き」を、この先も続けていくための考え方です。

まずは今日から、自分を「小さなお店の店主」だと思って、活動を見渡してみてください。

次回は「趣味と仕事の違いはどこにあるのか」についてお話しします。【リンク:第1章02の記事へ(公開後に設定)】

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